【4月17日】おむすびの力
今日はちょっと長いお話になりますが・・
好きな食べ物はなんですか?
私の答えは20年以上「おむすび」と決まっています。
元になっているのは、学生時代の体験。
北海道を自転車で旅するサークルにいた私は、峠道で自転車の調子が悪くなり
付き添ってくれる先輩と二人、どんどん日が暮れていく中
街灯もない上り坂を、その日に泊まるキャンプ場目指してこいでおりました。
しかも、土砂降りの雨。泣きたいのはこっちの方だと思いながら
先輩にも申し訳ないし、体力ももう残ってないし、ぬれて寒いし
ゆっくりしか走れないし、でも走らないと着かないし
ひたすら路面を見つめながら、グチョグチョの靴でペダルをこいでおりました。
そこでポツンと明かりを灯したドライブインが1軒。
休憩していこうか、とドアを開けたら、もう閉店とのこと。
それでも、「火を落としちゃったから、たいしたものできないけど」と言って
お母さんがずぶ濡れの私たちに、あたたかい梅干しのおむすびを出してくれました。
そうです。それが私の人生ナンバーワンの味。
お腹も空いてましたけど、本当に心にしみました。
体力も限界、気持ちもやさぐれ、外も真っ暗。
そんな中、このあったかいおむすびが私をどれだけ勇気づけてくれたことか。
そんな体験が「いとよし」を「結」から考えたことと、つながっているのかもしれません。
「結ぶ」の意味を名前に込めたと聞いたいとよしの高橋先生が、佐藤初女さんの話を教えてくれたのは、1年半ほど前のこと。
佐藤初女さんは、知る人ぞ知る日本のマザーテレサと言われた方。
2016年に他界されているのですが、食、特におむすびによって病んだ人たちを癒してこられたエピソードをお聞きして、
「おむすびって、すごい力があるんだなぁ」と思っていたのです。
最近たまたまSNSで、初女さんにおむすびの作り方を習ったという方が
そのおむすびを伝えるために、「おむすびの会」を開催しているということを知り、本日参加してきました。
そこでいろいろと驚いたのです。
お米の水加減も、お米の様子を見て、触って、感じて自分で決めていく。
炊き上がったごはんは、天地返しをせずに、上から少しずつとって移していく。
海苔も、ゆっくりゆっくり切る。痛くないように。
といった風に、私の日常のゴーカイおむすびとは全く違う世界です。
食材の状態はいつも違う。食材がどうして欲しいのか考えて、料理する。
土井先生も、そんなお話をされていたのを思い出しましたが
まさしく、ゆっくり確かめながら、いたわりながら大切に作っていくのです。
いただくと、やっぱりただ者ではないんです。このおむすび。
力が宿っている感じ。これさえ食べてれば大丈夫というか
何かあってもなんとかなる、というか。
初女さんの著書が何冊か置いてあったのですが
「手を抜くことは、心を抜くこと」という言葉があってドキッとしました。
とはいっても、普段からそんな風に私はきっとお料理はできないけれど
食べる、料理する、ということは
それだけの力がある、すごいことなんだ、という思いは刻んでおきたい。
そんな風に思わせていただいた、おむすびでした。
おむすび、すごい。